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河道内貯留を考える:Dynamic wave VS. Kinematic wave

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河道内貯留のついて勉強のためにも一度計算してみました。

河道内貯留とは

河道内貯留とは、下図1のように下流への伝播に伴いピーク流量(水深)が減衰する現象を示す。

f:id:SedimentHydraulics:20200919224847p:plain

このような伝播を計算するためには洪水波の移流拡散を考慮する必要があるため、次式のDynamic wave modelを用いる必要がある。


\begin{align}
   & \frac{\partial Q}{\partial t} + \frac{\partial }{\partial x}\left(\frac{Q^2}{A}\right)+gA\frac{\partial H}{\partial x}+gAi_e = 0 \\
   & \dfrac{\partial A}{\partial t}+\dfrac{\partial Q}{\partial x} = 0 
\end{align}

また、次の移流拡散項を省略したKinematic wave modelではこの伝播特性を計算することはできない。


\begin{align}
   & Q = \dfrac{1}{n} R^{2/3} i_b^{1/2}A \\
   & \dfrac{\partial A}{\partial t}+\dfrac{\partial Q}{\partial x} = 0 
\end{align}

数値計算:Dynamic waveとKinematic waveの比較

計算条件

  • 河道断面:矩形断面
  • 河床勾配1/1000
  • 川幅100m
  • 縦断距離20km
  • マニングの粗度係数0.03
  • 上流端流量は実洪水波形が良いと思い、2019年度台風19号相模川の城山ダムの放流量を参照しました。

f:id:SedimentHydraulics:20200919180409p:plain

出典 https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/damchousetsu_kentoukai/dai01kai/2-3_R1T19_dam_taiou.pdf

元データがなかったのでトレースしました。

計算結果

計算結果より上流から0km、10km、20km地点の流量の時系列変化を示す。

見易いようにピーク付近の拡大図を示す。Dynamic waveではピーク流量が200m3/s程度減衰していることが確認できる。洪水全体でみるとわずかにも見えるが、200m3/sはダム1個分くらいの容量である。

f:id:SedimentHydraulics:20200920002330p:plain

水理学の教科書等では河床勾配1/3000より急な河川では河道内貯留はそれほど重要でないという記載がしばしば見られますが、私の経験上、実河川の流量波形は大洪水時にはかなり急になるので急流河川でも十分に河道内貯留は生じると考えています。

余談ですが、

日本の治水計画では河道内貯留は考慮していない。これは計画論なので仕方無いこともあるが、実洪水の再現計算にKinematic wave(貯留関数法の河道モデルも同様)を用いることは現象把握の観点からは適切でないと考える。

Github

Jupyter Notebook Viewer


コードもぜひ。一般断面(自然河道断面)のkinematic wave法の勾配はどう設定すればいいのかな。。。


  1. 椿:水理学演習 下 pp.104

    水理学演習 下 POD版

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