一般的な治水機能を持つダムの場合, ダムができると応答の遅い礫河床でも運用後30年も経過すれば,河床材料の粗粒化やみお筋の固定化や植生域の拡大等がみられるます. これは,出水のピークカットとダムによる流砂の遮断によるものです. なので,出水とそれに伴う土砂移動は河川の健全な流砂系を維持するためには必要と言っているのですが,ちょっとそれからずれる現象がみられたので整理しておきます.
対象河川は愛知川(河川コード8606041153)です. この河川には,永源寺ダムという農業用の治水用途を持たないダムが着工1952年,竣工1972年であります. ダム運用後,約50年が経過している状況です.
ダム下流4-7km区間の1949年から現在までの4時期の航空写真による河道状況の経年変化を示したものが下図のとおりです.
ダム下流から図の地点までの間に支川は1河川ありますのが小規模で顕著な流砂が生じるものではないと推定できます.
第一印象で,一部植生域の拡大は見られますが,砂州,みお筋の固定化はそれほど顕著ではないように見えます.
これは,ダム建設により流砂は遮断されるが, 農業用ダムのため,出水時の流量低減は無い(実際は貯水池があるため洪水波形は鈍る)ことにより,下流河道の流砂環境への影響が小さいことを示しています.
これが私の仮説と合わないところです.
私の仮説では流砂を遮断した段階でダム下流河道への影響が生じると考えておりましたが,今回の事例は,流砂を遮断しても出水が十分に発生している状況下ではその影響が小さい又は遅れることを示しているものと考えられます.
今後このあたりの力学的な裏付けをしっかりしたいなと思います.
参考サイト等
- 1949年の航空写真は,地理院の単写真よりQGISのジオリファレンスを使ってgeotiff化.方法は以下を参照.
computational-sediment-hyd.hatenablog.jp
- はてブロへのhtmlグラフの埋め込みは以下を参照
computational-sediment-hyd.hatenablog.jp
- 河川コードは以下を参照
computational-sediment-hyd.hatenablog.jp