12/25追記 発表資料が公開されていました。
12/6に水工学委員会「令和元年度台風19号豪雨災害調査団」速報会に参加してきたのでそのレポートを.
プログラムはこんな感じです.
仕事の関係で前半のみ(中北先生の前)で帰りました.
私の専門分野なので令和元年台風19号水害の特徴を自分なりにまとめておきます.
降雨規模は過去最高クラスで短時間,広範囲型
- 関東だとカスリーン台風や狩野川台風が有名ですが,それを超える流域も多かった.福島,宮城では軒並み過去最高を記録.
- 利根川八斗島上流は計画規模(カスリーン台風)の3日雨量と今回の1日雨量が同規模.荒川支川入間川流域も同様.
河川流,越水はとにかく大規模
- 多くの河川で計画高水位を超過.利根川でも広範囲で超過.
- 越流水深が多きすぎる.千曲川では縦断的に1km以上の範囲で越流し,水深は最大1m.
- 10時間以上越水し続けた場所もある.
- 入間川流域では,短時間で急激に降ったため,計画降雨の遅れ時間よりも短くなり,ピークが重なった.
氾濫,破堤はあらゆるところで
- 破堤は多分100箇所以上.大部分が県管理箇所なので情報が少ない.宮城,福島がほとんど.
- 氾濫流が河川に戻す際にまた越水して堤防の川表を浸食し,破堤する現象が多く見られた.
- 扇状地の県管理河川では,河道を完全に無視して,自由に網状化,蛇行化するような現象が多く見られた.
- 那珂川の氾濫箇所では3日間浸水が続いた.ここはもともと霞堤があったが河川整備で閉じられた.
避難指示にまずいところがあった
- 避難判断(実績ベース) は遅れ時間の判断にまずいところがあった.入間川流域の一部では避難指示解除後に越水,破堤.
- そもそも水位周知河川ではない河川※で越水.※判断基準や浸水想定区域図がない.
被害者,死者は溺死が多い
- 業界の定説で豪雨による河川氾濫は死者がほとんど出ない(死者は土砂災害)がありますが,今回は溺死が多い.
- 原因は現時点では不明ですが,氾濫流が大き過ぎたことが想定される.
その他
- 各発表資料はかなり貴重なデータなので是非公開してほしい.
- 定量的なデータがほとんどない.どんどん計測,公開して良い研究が生まれて欲しい.
- 危機管理水位計のデータはあまり使えなかったらしい.
- すべての発表で石川忠晴先生が質問してました.元気です.
報告会を聞いてから思うこと
- 今回の雨は近年最大で今後河川整備のベンチマークになってくるのかなと思う.
- 想定を超える外力に対するシステム設計(ビヨンドデザイン)の必要性を痛感.
- 被災状況はメディア等の情報以上に深刻で,情報収集は重要だと思った.実際に自宅の市内でも,外水氾濫が多く生じたがほとんど報道されてない.
- 直轄とそれ以外では情報量の差がかなり大きい.
- 判断の分かれるところではあるが,各地域の具体策を国主導で進めるのは経済的,時間的に難しい気がする.河川計画のダウンスケーリングは各地域でやる必要があるのでないか.
- そんなところで,最近まじめに地域防災を考えてみようかなと感じてます.